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コラム「スケート探訪」 Vol.2 黒岩 彰さん 「黒岩がくれた感動」
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ぐっと気温が下がると、「いよいよシーズンだな」と、心躍る。が、水曜日には11月も
下旬だというのに、大雨が降った。早く寒くなってと願うスケート関係者ならずとも、首
を傾げたくなる天気だった。
スケートの盛んな国はどこも寒い。もちろん、北海道の冬も負けずに寒い。「寒いのに、
何が楽しくて回ってるの」、よくそう聞かれた。マゾなのかも知れないが、寒いからこそ
達成感がある。寒さから逃げるのではなく、挑んで克服する。そこに醍醐味が生まれた。
とある飲み会で、高校の後輩がサラエボ五輪の黒岩彰を語りはじめた。「大雪が降って
きて、リンクの整備が追いつかなくなったんすよ。レースが始まるまで、何時間も真っ白
なリンクをみてました」。
当時、彼は中学3年生だった。マラソンの瀬古、柔道の山下がいない冬は、スケートの
黒岩が「日の丸」を背負った。受験を控えていたにもかかわらず、その彼は、深夜までテ
レビの前を離れずに「黒岩」を観たという。
今では、オリンピックなどでテレビ放映される試合のほとんどが、空調の整った屋内リ
ンクで行われる。だからもうスケートでは、「サラエボの黒岩」のように、厳しい天候が
記憶の背景になることはない。気象条件で、スケーターが涙することはなくなった。もっ
とも、記録は大幅に伸びたし、選手も屋内でのレースを歓迎している。
だが、彼は言った。「黒岩がね、頑張ってたんすよ、雪ん中で。帽子を目深にかぶって
集中してたんすよ。だから、自分も頑張ろうって」。
過酷な条件だからこそ、伝わる感動もある。
2006年11月24日 苫小牧民報コラム 一部改
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